【小濱介護経営事務所 代表 小濱道博】
1.科学的介護の幕開けと言える21年度介護報酬改定の論点は
2021年度介護報酬改定に関する省令・告示が出そろい、いよいよ改定内容が確定した。疑義解釈の話題に入る前に、改定のポイントを改めて振り返り、整理しておく。
4月の介護報酬改定の改定率は、18年4月の前回改定率0.54%に続いて0.70%のプラスとなったが、全ての事業者の収入が一律で0.70%上がるわけではない。今回新設された上位区分の報酬を算定できる場合は増収となり、現状維持の場合は大きく減収となる。今回の介護報酬改定は、事業者間の収入格差が広がり、二極化が拡大する介護報酬改定だと言える。
改定の事項として、「感染症や災害への対応力強化」など5つの課題に対する方向性が示された。特に、LIFEデータベースへの取り組みが本格的に加算の要件に反映されて、自立支援介護と共に、「科学的介護の幕開けの介護報酬改定」と言っても過言ではない。21年度改定は、介護保険施行20年の一区切りを付けるかのように、過去と比較しても最大規模となった。多くの介護現場で混乱は避けられない。
2.感染症や災害への対応力強化
(1)感染症対策の強化
施設系サービスについて、現行の委員会の開催、指針の整備、研修の実施等に加えて、訓練(シミュレーション)の実施が義務付けられ、その他のサービスについても、委員会の開催、指針の整備、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施が義務化された。これには、3年の経過措置期間が設けられた。
(2)業務継続に向けた取り組みの強化
全ての介護サービス事業者を対象に、業務継続に向けた取り組みの強化が義務化された。これは、業務継続に向けた計画等の策定(BCP)、研修の実施、訓練(シミュレーション)の実施等である。これも、3年の経過措置期間が設けられた。
(3)災害への地域と連携した対応の強化
非常災害対策(計画策定、関係機関との連携体制の確保、避難等訓練の実施等)が求められる介護サービス事業者(通所系、短期入所系、特定、施設系)を対象に、小多機等の例を参考に、訓練の実施に当たって、地域住民の参加が得られるよう連携に努めるとした。
3.地域包括ケアシステムの推進
(1)認知症への対応力向上に向けた取り組みの推進
訪問系サービスについて、認知症専門ケア加算が創設された。緊急時の宿泊ニーズに対応する観点から、多機能系サービスについて、認知症行動・心理症状緊急対応加算も新たに設けられた。介護に直接携わる職員が認知症介護基礎研修を受講するための措置が義務付けられ、21年3月末時点で配置されている職員への対応は3年間の経過措置が設けられた。21年4月以降の新入職員の受講については1年の猶予期間がある。
(2)看取りへの対応の充実
基本報酬や看取りに係る加算の算定要件において、「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」等の内容に沿った取り組みを行うことが算定要件に加わった。特養、老健施設や介護付きホーム、認知症グループホームの看取りに係る加算について、現行の死亡日以前45日前からの対応が新たに評価された。
介護付きホームについては、看取り介護加算が見直されて、(I)72単位と、看取り期に夜勤または宿直により看護職員を配置している場合に500単位を上乗せする、看取り介護加算(II)が新設された。また、看取り期の利用者に訪問介護を提供する場合、2時間ルールを弾力化して、医師が回復の見込みがないと診断した場合には所要時間を合算せずにそれぞれの所定単位数の算定を可能とした。
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