【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■健全な病院経営と、医療従事者の良好な勤務環境の両立を目指すには
医療環境の急激な変化により、病院経営の安定性が崩れた年になった。また、医療従事者の勤務環境も大きく変化したため、さまざまなストレスが本人やその家族などにもかかっている。新型コロナウイルス感染症はいまだに先の見えない状況で、具体的な有効策があるわけではない。しかし、病院経営状況の可視化や、勤務環境の可視化を試みることにより、一般社会の理解や公的支援につながる可能性がある。
経営状況の可視化については、四病院団体協議会や全国医学部長病院長会議などが定期的に調査・報告しており、かなり厳しい状況にあることが明らかになっている。医療従事者の勤務環境については、相対的に定量評価は難しいかもしれないが、今後、定性評価なども含めて明らかになってくると思われる。
入院医療における診療報酬のうち、ベースとなるホスピタルフィーは、病院施設そのもののハードに対する費用負担と、看護師などの医療従事者や事務スタッフなどのソフトに対する費用負担から構成される。適切なホスピタルフィーを設定するには、これらの負担を反映させることが必要であり、客観的な妥当性が求められる。
2008年度診療報酬改定で急性期医療の入院料を対象に、「重症度、医療・看護必要度」(導入当時は「看護必要度」の呼称)の基準が導入されてから、12年以上が経過した。一貫して、看護必要度の基準を満たす場合に、高い点数が設定されて手厚い看護配置が求められてきた。逆に手厚い看護配置を実現していても、基準を満たさなければ、高い点数をもらうことはできない。「看護必要度」=「手厚い看護配置を要する」という関係性が成り立つことは、看護管理の研究において、当初は正しいことだったと思われる。
しかし、看護必要度を診療報酬の要件として使い始めたために、当初の定義からは変わってしまった。そのため、「看護必要度」≠「手厚い看護配置を要する」に変化してしまったと懸念される。
診療報酬の要件となっている現状の看護必要度で、手厚い看護配置の必要性を、看護必要度で示すことはできるのだろうか? 客観的な妥当性について考えることを通じ、現場の負担をより適切に反映させることができないだろうか? その結果、健全な病院経営と良好な勤務環境の両立の後押しができないか、考えてみたい。
■入院料ごとの平均在棟日数と人員配置の関係から見えてくるケアの必要性
病床機能報告(18年度報告)のデータから、入院料と看護配置、看護補助者配置を比較した=表1=。
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次回配信は1月6日5:00を予定しています
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