【株式会社メディチュア 代表取締役 渡辺優】
■「医師事務作業補助体制加算」は12年間で、新設当初の約2倍の点数に
これまで、医療従事者の奉仕の精神に支えられていた病院経営は、働き方改革により、大きな変革を迎えつつある。働き方改革は号令だけでは決して進まない。改革推進において大きな2つの課題がある。まず、奉仕の精神によるところが大きい労働力に対し、「適正な賃金を支払う」必要がある。そして、「適正な労働時間を守る」には、現状の人手では不足する。
1点目の適正な賃金の支払いに対しては、このことを多分に意識したのであろう、「地域医療体制確保加算」のような点数が2020年度診療報酬改定で新設された意義は大きい。このような診療報酬による後押しは、さらに推し進めていくべきである。
2点目の人手不足においては、資格保有者の人数が限られる医師・看護師・薬剤師などの医療従事者は、不足感があったとしてもすぐに補充することは難しい。育成するにしても、大学入学などから、実務に就いて活躍できるまでにはかなりの期間を要するため、少なくともここ4、5年の不足に対する解決策にはならない。この不足解消を一方的に病院側に押し付ければ、従事者確保競争のような事態が起きるだろう。競争が行き過ぎれば、医療提供体制の崩壊すら生じかねない。そのため、タスクシフティングやタスクシェアリングが重要であり、特に資格職から非資格職へのタスクシフティングは極めて重要である。
タスクシフティングの代表的な人員となる医師事務作業補助者について、診療報酬点数の側面から整理した=グラフ1=。「医師事務作業補助体制加算」に30対1、40対1を新設した12年度の改定以外では、改定のたびに点数が上がっており、また、18年度と20年度では大幅アップが続いた。08年度の加算新設当初から20年度改定までの12年間の点数推移を細かく見ると、25対1は約1.8倍(355点から630点)、50対1は約2倍(185点から375点)、75対1は約2.3倍(130点から295点)、100対1は約2.4倍(105点から248点)になった。ここまで大幅に点数が伸びている改定項目は珍しい。
このような点数の伸びから、病院勤務医の負担軽減と、医師事務作業補助者へのタスクシフティングが重要視されていることの高まりを感じる。
グラフ1 医師事務作業補助体制加算 点数推移(12年度以降は加算1を実線、加算2を点線で表記)
厚生労働省 改定資料などを基に作成
■医師事務作業補助者は年々、手厚い人員配置へシフト
医師事務作業補助体制加算を届け出ている施設において、医師事務作業補助者の人員配置は年々手厚くなっている=グラフ2=。
グラフ2 医師事務作業補助体制加算の人員配置状況(施設割合)
厚生労働省 「診療報酬改定の結果検証に係る特別調査の結果」などを基に作成(無回答の施設は除外)
病院が年々、医師事務作業補助者の配置体制を手厚くしているのは、グラフ1で見た診療報酬点数の高さにも起因するだろう。ただ、要因はそれだけではない。
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次回配信は9月2日5:00を予定しています
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