【千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長 井上貴裕】
新型コロナウイルスの新規感染者数が減少し、緊急事態宣言が解除されたことに伴い、医療提供体制も一時の予断を許さない状況から明かりが差そうとしている。とはいえ、病院の経営は極めて厳しい状況にあり、財務的な窮地に陥っている病院も存在する。
表1は、日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会の新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(速報)からデータを抽出し、一部は私が推計したものである。
表1 ※クリックで拡大(以下同)日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会、「新型コロナウイルス感染拡大による病院経営状況緊急調査(速報)2020年5月18日」を基に作成。(推計)は独自の推計値
新型コロナウイルス患者を受け入れた病院も、そうでない病院も、2020年4月は対前年同月比で入院・外来共に大幅な減収となっている。患者数が減少すれば、材料費のような変動費は減少するが、病院経営で最も大きな比率を占める人件費は固定的なため、収支は当然のことながら悪化する。さらに、消毒液等の消耗品の増加、マスクや防護具なども必要になるし、PCR等に関わる費用の負担、新型コロナウイルス患者を受け入れる病院では危険手当を支給するため、結果としては支出が減るどころか増えるケースもある。
もちろん、このような状況に対して政府も診療報酬で補填してくれたわけであるし、自治体からの補助金等も病院によっては投入されている。ただ、全ての病院がその恩恵を被っているわけではないし、そもそもそれで十分であるはずがなく、今後の病院経営への不安は尽きない。ただ、ここで焦る必要はない。皆が苦しい。そして、道は必ず開けると私は確信しているが、コロナ前の状況に戻ろうとするのではなく、新たな病院経営を志向する必要があると考える。
本稿では、悪化する病院経営に対する私なりの処方箋を論じ、現状からの打開策を提示する。
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