持分なし医療法人への移行計画認定制度が、2020年9月30日に期限を迎える。持分ありから持分なしへ移行したのは、07年の改正医療法施行から19年3月末までで850法人にとどまり、持分ありが3万9263法人、持分なしは1万5153法人と、持分ありが依然大半を占めている。利用促進のために行われたセミナーから、制度のポイントを紹介する。【齋藤栄子】
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1月31日開催の厚生労働省委託事業「医療法人に関する制度等についてのセミナー」で、弁護士法人海星事務所の表宏機弁護士・税理士は「持分なし医療法人への移行」(認定医療法人制度)について講演した。
改正医療法による医療法人制度改革で、社団医療法人は「持分あり」の設立ができなくなった。持分とは、出資額に応じて払戻しまたは残余財産の分配を受ける権利で、相続・譲渡が可能であり、持分を持つ出資者が社員ではない可能性もある。
一方、既存の持分あり医療法人は、経過措置型の医療法人として、「当分の間」は持分あり医療法人のままでよいとされた。しかし、持分にまつわる経営上のリスクがあるため、国としては持分のない医療法人へ移行して経営の安定性と非営利性につなげてほしい考えから、移行による課税を免除する「移行計画認定制度」を創設した。持分のあり・なしは法律上、定款により定められている。
持分の影響について、例を挙げて説明する。
持分を有する出資者には払戻請求権がある。評価額は、設立時に出資した財源の割合で今の価値に引き直すため、資産が増加していれば持分も増加することになる。
例えば、出資者Aが設立時に1800万円を出資し、現在の資産価値が50倍になっていて、出資者Aが退社で払戻請求をした場合、9億円の支払いが医療法人に発生する。また、払戻請求をしなかった場合でも、出資者Aが死亡して相続が発生した場合、相続人は納税資金が必要になるため払戻請求をせざるを得なくなる。設立時の資金が不動産に使われている場合も多いので、経営に大きく影響する数字が発生する。出資者全員が持分を放棄した場合も、医療法人へのみなし贈与となり課税されることになる。
改正医療法施行直前の07年3月末時点の社団医療法人は4万3627法人、持分ありは4万3203法人で、持分なしへ移行したのは19年3月末で累計850法人だった。この19年3月末の法人数は、持分ありが3万9263法人、持分なしが1万5153法人。
移行の認定件数が伸びなかったため、14年度税制改正で「医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置」(通称「認定医療法人制度」)が創設され、持分に関して個人に課税される相続税・贈与税の納税猶予・免除の措置がなされた。さらに17年度税制改正で同措置の適用期間が20年9月30日まで延長され、新しい認定医療法人制度が設けられた。
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