【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
政府が進める「働き方改革」が、本当に日本の将来のためになるものであり、求められる改革なのかは議論のあるところだ。しかし、日本のさまざまな職場に確実に影響を与えていくだろうし、介護事業への影響も小さくはない。
年次有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対し、5日は有給休暇を取得させるという昨年4月に始まった新たなルールは、大きな事業者なら現状でクリアできても、小規模事業者では、人を増やして対応したかもしれない。
「今よりさらに少ない人数で業務を回さねば」という介護事業者も出てくるだろう。そうなると、職員教育の必要性は理解していても、就業時間中に職員教育の時間が取れなかったり、外部研修にも職員を派遣できなくなったり、人数を減らして派遣することも出てくるのではないか。
大手営利企業のように、従業員のスキルアップは「自己責任」「他人任せ」で、スキルのある人材だけを雇用して見合った対価を支払えば、自然とスキルのない従業員は淘汰されるだろう、なんてことは経営体力の弱い介護事業者では考えられない。
介護事業は、機械では代用が利かない「人の力」で成り立つ部分が多く、人材集めが何よりの課題だ。ただ、収益は介護給付費が中心で、収益には“天井”がある。物が売れさえすれば“青天井”で利益が出る事業とでは、人材の確保策も違ってくる。介護では、支払える人件費の上限も低くなるのだから、地道に自前で人を集め、育てる努力が求められる。
■介護職に魅力を感じている人の意欲を維持できるか
そもそも対人援助の仕事は、人の暮らしに深く介入していく。品質を左右するのは職員の質であり、その部分を職員自身の責任に転嫁したりすれば、責任放棄と言われかねないし、長期的に見れば事業経営危機にもつながりかねない。
なぜなら、生産年齢人口の減少が続く我が国で、介護人材の確保は国の政策で何とかなる問題ではないし、全ての介護事業者で人材を確保できる見込みはない。
だからこそ、人材確保のためには他事業所と差別化できる魅力を持つ必要がある。そのための重要なアイテムとなるのが、「魅力ある人材育成の教育システム」である。
(残り2776字 / 全3711字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】