【吉備国際大学 保健医療福祉学部 作業療法学科 教授 京極真】
Q ここ数年、新人スタッフが1年以内に退職する事案が続いています。事情を知る熟練スタッフに聞くと、辞める新人スタッフはそろって「仕事が想像以上にキツかった」「イレギュラーなことが多過ぎて自分には付いていけない」などと打ち明けていたそうです。中堅スタッフに意見を求めると、「最近の若い人たちは甘ったれている」「新人スタッフに合わせる余裕は現場にはない」と痛烈にコメントします。どうしたら新人スタッフが定着するのだろうか?
結論を言えば、(1)医院のビジョンを明確にする(2)多職種連携の知識と技術を学ぶ機会を提供する(3)スタッフ教育の知識と技術を学ぶ機会を提供する-といった対策を実行する必要があります。これは医院全体の問題ですから、スタッフ一丸となって取り組んでいきましょう。
■新人スタッフの早期退職は医院全体の問題
新人スタッフの早期退職は、新人スタッフにとっても、医院の経営にとっても不幸です。新人スタッフにとっては、自身のキャリア形成においてマイナスになる恐れがあります。他方、医院にとっては、最低でも3年は働いてもらわないとスタッフ1人を雇用するために発生したコストを回収できず、経営的な痛手になります。経営者にとって雇用は投資活動ですから、これは完全にミスです。
また、新人スタッフの早期退職が続くということは、組織マネジメントがうまくいっていない証左です。つまり、残ったスタッフにとっても、そんな医院で働き続けることはストレスになり、職業満足度の低下や治療成績の悪化につながる恐れがあるため、いつ退職してもおかしくない状態です。中堅スタッフは、「最近の若い人たちは甘ったれている」と言っていますが、問題の本質はそこにはないです。新人スタッフが早期退職することによって働きづらい職場をつくっているということは、回り回って自分たち中堅・熟練スタッフの首を絞めることになるからです。
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