【医療法人梅華会グループ理事長 梅岡比俊】
私が開業して感じたことは、院長の仕事は多岐にわたり、量も多いということです。その中には、採血などスタッフへの医療技術の教育や、スタッフ間のいざこざへの対処、スタッフからの要望への対応というように、スタッフに関係することも少なくありません。そこで、クリニック内のポジションごとに、スタッフに助言や指導をする取りまとめ役となるリーダーを決めることによって、たとえ自分が診察中であっても、クリニックの運営を円滑に行うことができます。
さらに、リーダーがしっかり育ってくれば、今まで自ら行っていた現場を監督する権限を委譲し、自分は経営と診療に専念することが可能になります。とはいえ、権限委譲は丸投げとは異なります。丸投げは、自分がやっていた仕事を「じゃ、後はよろしく。全て自分でやってね」と擦り合わせもなく相手に託すことで、権限委譲は、自分の理念や考え方、その仕事のやり方を相手に十分理解してもらった上で、自分がするのと同じように仕事をしてもらうことです。まず、実際にその仕事をやってみせて、次に相手の仕事を見守り、足りない部分はフォローして、徐々に一人で行えるように育てることで権限委譲が行えます。
当然、院長である自分でする方が、より正確で時間もかからないため、スタッフに任せた仕事にもついつい手を出してしまいがちです。しかし、これからクリニックを発展させるためには、権限委譲は「緊急ではないけれど重要なこと」です。開業当初は何でもかんでも自分で処理して回していたクリニックも、患者が増え、スタッフが増え、それでは分院を、などと発展してくると、いくら院長の能力が高くても絶対に一人では回らなくなる時が来ます。それを見込んで、少しずつリーダーを育成して、いずれ権限を委譲するための準備をしておくことが重要だと思います。権限委譲はいきなりできるわけではないので、フォローしながら徐々に委譲しなければならないのです。
■経営理念を理解し、共有している人材をリーダーに
そのためにはまず、リーダーとなり得る人の選定が必要です。リーダーの選定に一番必要なことは何だと思いますか? 他より正確で、優れた技術があることでしょうか? 私は一番大切なことは、院長やクリニックの理念をしっかりと理解し、共有しているかどうかだと思っています。
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