連載「先が見えない時代の戦略的病院経営」でおなじみの井上貴裕氏(千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長)は、「20年度改定で問われる『急性期病院の中味』」と題してCBnewsセミナーで講演した。9月20日に行われた講演の様子を紹介したい。【構成・大戸豊】
■高度医療は高コスト、消費税補填漏れが追い打ち
急性期病院の平均在院日数は短い方がいいが、多くの病院では、病床利用率が上がらずに困っている。対策として、地域包括ケア病棟にしてもいいし、病床をダウンサイジングすることも考えられる。ただし、病床を減らすだけで経営状態が良くなるほど、単純な問題ではない。
病院機能別に収支を見ると、療養病院は黒字、DPC病院は赤字、特定機能病院になると大幅赤字だ。
高度医療を提供すると収入は増える。同時に薬や材料も高額なものを多く使うため、高コストになる。例えば、特定機能病院は、医薬品費と材料費を合計すると、対収益で38.5%を占める。高額な抗がん剤などの登場で、比率はどんどん高まっている。DPC病院でも25%になる。高額な材料による増収は利益を生むわけではなく、安易な人員増や設備投資は財務状況を逼迫させる。増収になったから人員増や設備投資ができるわけではない。
療養病院は15%で、収入は増えなくても、コストが少なく、利益が生まれやすいというメリットがある。
大病院の利益率を見ると、ビジネスが続く事業体だと思えない。さらに、消費税の補填漏れの問題で、病院全体では、本来支払われるうちの85%しか支払われていなかった。特定機能病院はさらにひどく61.7%。千葉大附属病院でも、年間で5億円の補填漏れがあった。
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