地域の病院は、人口が今の半分でもやっていけるのか―。日本慢性期医療協会会長で、平成医療福祉グループトップの武久洋三氏は、中小病院に、自ら問い掛けてほしいと話す。
CBnewsマネジメントで連載中の井上貴裕氏(千葉大学医学部附属病院 副病院長、病院経営管理学研究センター長、ちば医経塾塾長)が、武久氏に、回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟などの課題や、病床機能分化の今後などを尋ねた。
浮かび上がってきたのは、人口減が進み、ITの進展で療養の場が地域にシフトしていく中、残っていく病院が今後10年で明確になってくるということだった。【司会・構成、大戸豊】
井上貴裕氏(左)と武久洋三氏
■病期に合わせ、めりはりのあるリハビリを
井上 先日、平成博愛会のグループ病院のデータを見たが、回復期リハ病棟の在院日数は90日程度だった。
武久 重症の患者ばかり受け入れているが、軽症なら1カ月程度で退院できると思う。
脳血管疾患などの入院日数は最大180日だが、もっと早く復帰できる人は多い。にもかかわらず、180日ぎりぎりまで毎日9単位のリハビリを続ける病院もある。さらに、患者の体調が悪い時には、ベッドサイドでマッサージをしてでも算定する所もあると聞いている。
井上 そういった反則は、外からは見えない。
武久 今後は明らかになるはずだ。地域の住民も「うちのお父さんはA病院で半年リハビリしても体が動かなかったのに、お隣さんはB病院で3、4カ月リハビリして、歩いて帰って来た。A病院には入院しない方がいい」などと気付くだろう。
病期でリハビリの必要量も変わる。発症から早い段階で、リハビリを集中的に行えば、その後の回復も進む。
例えば、65歳以下で脳梗塞、片麻痺の患者が入院した場合、初月のリハビリは1日9単位では足りないことも多い。ベッド上でも自分で機能訓練ができる器具を用意し、多職種でリハビリを促せば、回復につながる。
発症した月や2カ月目は9単位以上リハを行い、4カ月目などは4単位にするなど、めりはりを付けた方がいい。
しかし将来は、そういう細かいことは言わずに、入院料に包括し、患者ごとに十分なリハビリをした方がよいだろう。
井上 地域包括ケア病棟の入院料は60日を超えると大きく下がるが、回復期リハ病棟は脳血管疾患で180日と3倍の開きがある。リハビリが包括なのか、出来高算定なのかの違いはあるが、なぜこの日数なのか、この報酬体系なのか違和感がある。
武久 厚生労働省は地域包括ケア病棟のリハビリ(1日平均2単位以上)を包括化したが、今後包括の仕組みが広がるかもしれない。2018年度診療報酬改定では、回復期リハ病棟でも1日の提供は基本6単位とし、9単位まで行う患者は制限するなど、変化も見られる。
■回リハ、地包ケア、療養は慢性期治療病棟として一つにまとめてもいい
井上 平成博愛会では、回復期リハ病棟、地域包括ケア病棟、療養病棟をどのように使い分けているのか。
【訂正】
1ページ目の本文を次のように訂正しました。
・終わりから4パラ目として「しかし将来は、そういう細かいことは言わずに、入院料に包括し、患者ごとに十分なリハビリをした方がよいだろう。」を追加
・最後の中見出し「■回リハ、地包ケア、療養は一つにまとめてもいい」を「■回リハ、地包ケア、療養は慢性期治療病棟として一つにまとめてもいい」に差し替え
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