【株式会社ニューハンプシャーMC 代表取締役 柴田雄一】
■「身銭を切る経営者」だから身に付く金銭感覚
開業に必要なポイントを紹介した「“開業”プロフェッショナル」(医学通信社刊)で、私は“経営者脳”について説明しました。これは、勤務医(給与所得者)から、開業医=経営者(「売上所得者」とも言えます)になると身に付いていく思考です。
勤務医の頃なら、会議の資料がカラーでも気にも留めなかったのに、経営者になるとスタッフに「モノクロ印刷にしろ」と指示し始めたり、残業中に職員同士が雑談しているのも大きなストレスになったりします。経営者は利益を生まない費用が発生することに敏感になるのです。
ほかにも、勤務医時代には、専門外の症例であれば躊躇なく断っていたのに、経営者となるとまずは受け入れ、収入機会の損失を極力防ごうとします。「身銭を切る経営者」になれば、提供する労役や費用が、どれくらい利益を生み出すのか、自然と測定するようになるのです。
私自身、医療経営コンサルタントとして、継続的に利益を生み出していくことにたけた多くの“優秀”な経営者と仕事をしてきました。彼らには共通してある“経営者脳”が備わっています。それは、「利益は買うもの」という思考です。
人間の従来備わっている防衛本能によって、普通は前述のような目に見える無駄な1円を削る方に意識が奪われがちになるものです。一方で“優秀”な経営者は、無駄な1円を削ることに比べて、確率の低いまだ目に見えない不確実な未来の1円の利益を生み出すことに力点を置きます。つまりは積極的に“利益を買う”ようになるのです。その“買う”対象の一つが、「医師」です。医師1人を招聘するのは多額の買い物となりますが、躊躇なく買います。“優秀”かどうかは関係ありません。なぜならば、医療機関にとっては何よりも利益を生み出す源泉と皆知っているからです。“優秀”な経営者は、それ以外で利益を生み出す資源への買い物、つまり投資判定にたけているのです。
筆者の柴田雄一氏が、6月14日(金)18:30から東京で、CBnewsセミナー「病床稼働を増やす、手術件数を増やす次の手-地域医療連携活動だけに頼らないデジタル・マーケティングの導入-」を開催します。ご参加お待ちしております。
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次回配信は4月24日5:00の予定です
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