日本能率協会総合研究所が2月28日に開催した、厚生労働省委託事業「医療勤務環境改善マネジメントシステム普及促進セミナー」で、厚労省の安里賀奈子氏(労働基準局労働条件政策課・医療労働企画官、医政局医療経営支援課・医療勤務環境改善推進室長)は、「行政説明・働き方改革の動向と医療機関」をテーマに講演した。時間外労働の上限1860時間に対し、「医師をそこまで働かせるのかという批判が検討会でも出た」が、これは法令上の上限であり、実際には各病院が労使間で結ぶ36協定で話し合って決めるなどと説明した。【齋藤栄子】
安里氏は、働き方改革がなぜ必要なのかについて、これからの「超少子高齢社会」における労働力をどのように維持するかという点から、取り組みが始まったことを改めて説明。労働力として、女性は出産・育児で家庭に入る「M字カーブ」の傾向にあるが、潜在労働意欲があること、高齢者も元気で働きたい層が調査で7割近くいたことを挙げた。これらの層は、半数以上がフルタイムではなく、別の働き方を希望していて、この労働力を取り込める仕組みにより、いろいろな人が労働に参画して社会を成り立たせる方針で、これは医師も同じだと説明する。
医療機関における「働き方改革」のポイントとして、次の3つを挙げた。
(1)時間外労働の上限規制。月45時間、年360時間を原則とする。2019年4月1日(中小企業は20年4月1日)から、医師は特殊性を踏まえて24年度から適用。
(2)19年4月1日から、年次有給休暇の確実な取得が必要。10日以上の年次有給休暇が付与される全ての労働者に対し、年間5日、時季を指定して有給休暇を与える必要がある。
(3)20年4月1日(中小企業は21年4月1日)から、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で、基本給や賞与など個々の待遇ごとに不合理な待遇差が禁止される。
■医師は24年4月から上限規制を適用
労使間で合意し、36協定を結べば働くことが可能となる時間外労働の基準について、一部の事業・業種には上限規制の適用を猶予・除外していて、医師はこの一つに該当する。改正法施行5年後の24年4月から上限規制を適用することとしているが、この上限規制について「医師の働き方改革に関する検討会」で18年度中に決定する考えで、2月20日の第19回会合では次の案が示された。
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