今月、厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」のとりまとめ骨子が公表されましたが、医師の時間外労働の多さに、驚いた方もいるかもしれません。医師の働き方を変えるには、多くの課題を見直す必要があります。中でも医師の地域偏在、診療科偏在は大きく、医師の働き方を変えることは、医療の在り方を変えることにもつながります。
今回、医学部入試からの過程をたどりつつ、医療に興味を持つビジネスパーソンでも分かりやすいように、問題を整理しました。【大戸豊】
病院を顧客とするヘルスケア企業で、先輩Aと後輩Bが医師の働き方改革について話し合っています。
■入試での得点調整は、医師の働き方、地域偏在とリンク
先輩A 医学部が人気だけど、なぜだと思う?
後輩B ずばり、給料がいいからですか?
先輩A でも、公立病院の院長の給料は2065万円。もちろん高いけど、一般企業でも電子機器のキーエンスは2088万円だし、給与で見れば別の道もあるよ。企業は5年後、10年後を見通すのは本当に難しいけど、医師は10年以上「ニーズ」も「マーケット」も見込めるし、AI(人工知能)にも取って代わられる可能性も少ないなど、「安定的」なのも魅力だし、やりがいのある職業だと思う。ただ、「医師は長時間労働だから」と敬遠する若い世代もいるかもね。
後輩B 医学部にも入りやすくなったんですか。
先輩A 医学部の定員は2019年度に9420人で、国が08年から「地域枠」などを増やし、10年で定員が1600人以上も増えてる。ただし、今後は定員も減っていくの。団塊世代の死亡者数が増える35年以降は、医療のニーズも減るだろうし、医師の養成には10年以上かかるから、国もそろそろ調整を始めるでしょう。
図 入学定員の推移
文部科学省「平成31年度医学部入学定員増について」より
後輩B 医学部入試で、問題が噴出しましたね。
先輩A 去年7月、文部科学省の局長が、東京医科大に便宜を図る見返りに、受験した息子を合格させてもらったということで逮捕されたけど、教育行政のトップ級がここまでするとは。
さらに東京医科大では、女子や多浪生を不利に扱うような得点調整が行われていたし、神戸大が医学部の推薦入試地域特別枠で、過疎地出身の受験生に不適切なやり方で加点をしてたのも明らかになったし。
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