【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
2018年度の介護支援専門員の実務研修受講試験の受験者数は4万9333人となり、17年度(13万1560人)から一気に6割強も少なくなった。
この結果について、受験要件が18年度から法定資格を有する者などに厳格化され、介護福祉士の資格のない介護業務の実務経験者が試験を受けられなくなった影響が出ているためとする人が多い。しかし、受験者数減少を受験資格の見直しの影響という一点だけで評価するのは間違っている。法定資格者以外の受験者が、17年度までの受験者の6割を占めていたという事実はない。むしろこの減少は、介護支援専門員の年収がさほど高くない現状で、資格更新研修などの負担も大きく、魅力を感じなくなった人が増えているからではないか。
■経験の長い介護福祉士の給与がケアマネを上回る可能性
特に処遇改善加算の支給対象ではない介護支援専門員と、当該加算による待遇改善が進んでいる介護職員の給与差が縮小したことで、介護職員から介護支援専門員に転職する魅力が薄れているのは事実だ。さらに19年10月からの支給が確実視されている新処遇改善加算によって、経験年数の長い介護福祉士は、介護支援専門員よりも相対的に給与が高くなる可能性が高く、介護支援専門員に転身した場合、給与が減ることも想定される。このことが介護支援専門員を目指す動機付けの低下につながり、受験者が大幅に減っているのではないだろうか。
考えてみれば、介護支援専門員に対する風当たりは強くなる一方だ。例えば18年度から一定件数を超えた生活援助中心型サービスを組み込んだ居宅サービス計画は、届け出義務が課せられた。これは建前上、「一律そうした計画を不適切として認めないわけではない」とされているが、一部地域では過度な行政指導があるといわれており、そのことを“ケアマネ公開処刑”と揶揄する向きもある。そんな中で、数十人の人生に深く介入するケアマネジメントの業務の負担を考えたとき、介護職員と比較して増えない給与と、増え続ける業務量を見据えると、介護支援専門員という仕事の将来を悲観する関係者も増えている。そのことが、試験の負担と相まって、受験者数の減少につながっているという認識が必要だ。
しかし、国が介護支援専門員より介護職員の給与ベースが高くなることで、介護支援専門員のなり手が減ることを予測していないわけがない。介護支援専門員の待遇改善の取り組みが遅々として進まない理由が別にあると考えるべきだ。それは、国は介護職員の確保を最優先にしつつ、介護支援専門員の確保は二の次でいいと考えているからにほかならない。
むしろ国は介護支援専門員の資格を得るための条件となる「実務経験」について、範囲を広げ過ぎたことを、ここに来て後悔している向きがある。
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次回配信は2019年1月30日5:00の予定です
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