長野県佐久市にあるくろさわ病院(83床)は、整形外科や形成外科を得意とし、一般病床(37床)と療養病床(医療・介護、計46床)の組み合わせで運営してきた。2017年4月に新築移転し、同年10月には療養病床をすべて地域包括ケア病棟に転換。グループのクリニックや介護施設・事業所の機能も、地域の医療機関などとの連携を強めながら、得意分野にシフトしている。
地域との連携強化により、紹介患者が増え、地域包括ケア病棟の稼働率の安定化にもつながっている。また、地元の商店街にも溶け込みつつ、息の長い関係をつくろうとしている。【大戸豊】
JR中込駅周辺の様子。右手の建物がくろさわ病院。駅ロータリー左側から商店街「グリーンモール」がある(写真提供:中込カメラ)
■療養病床を地域包括ケア病棟に変えた背景
くろさわ病院では、旧病院が築40年を過ぎた頃から移転先を探していた。近所のJR中込駅の駅前には、閉店した商業施設がそのまま残っていた。住民からも「公民館を新しくしてほしい」という要望が出る中、商業施設の跡地に病院を建て、建物内に公民館を設けることが決まった。現在、病院の2階部分は中込会館として地域住民に開放され、市民講座やサークル活動、中高生の勉強室としても利用されている。病院ができたことで、人の流れが以前と変わってきた。
中込会館の入り口(以下、写真提供はくろさわ病院)
地元商店街の商店が院内に食堂・売店を開設した
新病院には人が集まってくるベースがあったが、その一方で黒澤一也院長は療養病床の今後を案じていた。移転前の療養病棟入院基本料は「療養2」(医療区分2・3の割合が50%以上)で、収入的にも厳しかった。介護医療院への転換も考えたが、一般病床からの患者受け入れが難しくなり、急性期病院を続けられなくなる。
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