【北海道介護福祉道場 あかい花代表 菊地雅洋】
現在、介護事業における最大の経営リスクは、収益が上がっているのに、サービスを提供する人材がいなくなり、「黒字倒産」に陥ることである。それほど介護事業全体の人材の不足は深刻化し、明るい日が差す兆候も見えてこないのが現状だ。
社会情勢全般を見ても、その未来は暗い。生産年齢人口が減り続けるわが国では、全産業で労働力不足が深刻化しているが、その中で世間一般では他産業より待遇が低いという印象を持たれている介護の職業に、今後十分な労働力が回ってくることは想定し難い。将来的には高齢者の数は減り、介護を必要とする人も減っていくが、それよりも、生産年齢人口の減少の方が先行しており、減少のスピードも速いのだから、介護人材不足が解消する見込みは薄い。
そう考えると、よほど大きな改革がない限り、全ての地域で、全ての介護事業者が人材を確保できる見込みはない、と考える以外ない。介護崩壊は現実化しているのである。
そうした状況に、国も手をこまねいているばかりではない。2019年の10月以降、消費税増税分を財源として、経験年数10年以上の介護福祉士の給与を月額8万円引き上げる考えを示したり、外国人労働者の受け入れ範囲を広げたりするなど、さまざまな施策を打ち出している。遅きに失したという感も否めないが、ここ数年でやっと重い腰を上げ、具体的に取り組み始めているといったところだ。
■付帯業務の切り分けは、利用者の生活の質の低下にしかならない
その一環なのだろうが、厚生労働省の19年度予算概算要求では、「福祉・介護人材確保対策等の推進」として、前年度より52億円多い366億円を計上している。この中には「介護職の機能分化等による業務効率化や生産性の向上のための先駆的な取り組みへの支援」として5.9億円が含まれており、具体的には、「介護助手を活用したサービス提供モデルの確立」などが挙げられている。
介護職の業務効率化、19年度予算の概算要求に
ここでは、介護助手の導入・活用に向けて、介護に関連する一連の業務を整理・区分し、介護助手が担う介護の付帯業務を取りまとめ、介護職と介護助手の業務分担などを通じ、介護助手の活用を検討し、労働環境の整備・改善に向けた取り組みに予算を付ける。つまり、介護業務の全般は担えないが、一部を手伝える人材を助手として配置し、介護職員の業務効率化を進め、定着率のアップなどを図り、人材確保につなげようというものだ。
しかし、このような対策に人材対策としての効果があるだろうか? 介護職員のほかに、介護助手を介護サービスの場に配置することが、介護業務の省力化につながるのだろうか。
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次回配信は10月25日5:00の予定です
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