【一般社団法人リエゾン地域福祉研究所 代表理事 丸山法子】
「人材難でしょう」という私の問いに、「それがね、そんなに困ってはいなくてね」と、ある介護事業所の経営者は答えました。他の事業所でも「今のところ間に合っていて」と余裕がある様子です。あれれ、人材難じゃないの? それほど深刻ではないという経営者に出会う一方で、2018年版高齢社会白書(内閣府)では17年の介護分野の有効求人倍率は3.50倍で、全産業の有効求人倍率1.50倍の約2.3倍となっています。新卒募集だけでなく、年間通して中途採用の門戸を開き、採用枠を前年の倍にしたものの応募がなく、派遣社員に頼らざるを得ない事業所もたくさんあります。
■有効求人倍率(介護分野)の推移
必要な職員数が確保できないと、やがて利用者の抑制に向かいます。16年11月の調査では、全国の特別養護老人ホームの26%に空床があり、職員の採用難と離職が理由に挙がっています(17年みずほ情報総研「特別養護老人ホームの開設状況に関する調査研究」)。空床が増えると収益が減り、それが続くと行政のチェックが入ります。在宅で介護を続ける限界を超えた待機者がいながら、ハコはあるのに入れないのはよろしくないですね。
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