財務省が提案している新たな仕組みは、医療保険の保険料率が高くなり過ぎないように窓口負担とのバランスを自動的に見直すことで、医療保険を支える現役世代と公費の負担を和らげるのが狙いだ。財務省では、制度設計に踏み込んでこの仕組みを具体化させ、財政健全化計画に対する財政制度等審議会の提言に盛り込みたい考え。それ以降は、財政健全化計画に提案を反映させるよう政府内に働き掛ける方針だが、厚生労働省は「国民の安心を損ないかねない」と早速反発している。【兼松昭夫】
財務省案は、少子化に伴う現役世代の減少と高齢化による医療給付の増加が同時に進む中、現役世代の保険料負担と公費の負担増を抑えることで、医療保険の持続可能性を高めようという発想がベースだ。財政審の財政制度分科会の田近栄治分科会長代理は25日の会合後の記者会見で、「国保(医療費)の半分が公費だと言うが、いろいろな形で実は公費が入っている。従って保険の実効給付は高くなっている。裏を返せば自己負担は減っている」などと指摘した。
これまでは、医療給付が増えると公費の負担増と保険料率の引き上げが必要になってきたが、少子・高齢化が進む中、こうした対応も困難な状況になっている。
そこで、現役世代の負担能力を超えて医療給付が膨らんだら、保険料率を引き上げるのではなく、一定の計算式に基づき医療を受ける患者の窓口負担を増やして対応する形をイメージしている。ただ、田近分科会長代理は会見で、「一方的な給付の削減というわけではなく、一方的な負担の上昇というわけでもない」とも述べ、給付と負担のバランスを自動的に調整できるようにするのがポイントだと再三強調した。
課題は制度設計の具体化だ。現役世代の「負担能力」をどう判断し、窓口負担を増やすなら、窓口負担の割合を引き上げるのか、それとも定額を上乗せする仕組みにするのかなどは固まっていない。賃金や物価水準などと給付水準をリンクさせる年金のマクロ経済スライドも参考に財政審で引き続き具体化を進めるという。
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