【千葉大学医学部附属病院 副病院長・病院長企画室長・特任教授 井上貴裕】
2018年度診療報酬改定は本体部分がプラス0.55%、薬価等がマイナス1.74%となった=グラフ1=。改定後の病院経営はどうなっていくのか、個別改定項目などの議論も踏まえつつ、展望していく。
グラフ1 診療報酬改定 改定率の推移
その前に改定前の足元業績について、病院機能別に整理する。診療報酬改定の前年度に実施される医療経済実態調査の結果から、損益差額について一般病院全体と一般診療所全体で比較した=グラフ2=。一般診療所は黒字基調である一方、一般病院の業績は悪化傾向にある。一般診療所でも、入院診療収益のない「無床診療所」の方が、有床診療所よりも損益差額率では優れているものの、13年度以降は下落傾向にある。一般病院は、12年度は辛うじて黒字を維持していたが、その後は赤字幅を拡大している。病院よりも診療所の業績が良いことが分かる。
グラフ2 一般病院と一般診療所 損益差額の状況
一般病院は機能に差があるので、特定機能病院、DPC対象病院、療養病棟入院基本料1を届け出る病院の3つで比較した=表=。損益差額を見ると、療養病棟入院基本料1を届け出る病院では、手堅く黒字基調だが、特定機能病院やDPC対象病院では赤字となっている。100床当たりの医業収益を見ると、療養病棟入院基本料1よりも、特定機能病院では約3倍、DPC対象病院でも約2倍多いが、医薬品・材料費率、減価償却費比率、委託費比率も高い。「収入が多くても、支出も多い」のが急性期医療だといえる。
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次回配信は3月5日5:00の予定です
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