タスク・シフティング(業務の移管)は「段階的」に進めていく―。厚生労働省は22日に開かれた「医師の働き方改革に関する検討会」で、こうした考えを前提に議論することを提案した。医師の業務を看護師などに移管することで、大幅な労働時間の削減が期待できる可能性がある。しかし、厚労省は「段階的」との表現をあえて使い、タスク・シフティングの早期実現にこだわらない姿勢を示した。これまでの積極的な姿勢にブレーキを掛けた理由は何か。【新井哉】
■「なぜ進まないのか、議論すべき」
「現状として必ずしも医師のみがやる必要のない業務を行っていることも多い」。22日の検討会の会合で、厚労省の担当者は、他の職種への業務移管で労働時間削減の効果が期待できることを指摘した。ただ、現場では業務の移管がスムーズに行われているとは言い難い。これを踏まえ、「なぜタスク・シフティングが進まないのか、それぞれの立場から議論すべきではないか」と議論を促した。
そもそもタスク・シフティングはできるのか。厚生労働科学特別研究の研究班の調査がその実現性を示している。厚労省によると、研究班は、▽患者への説明・合意形成▽血圧などの基本的なバイタル測定・データ取得▽医療記録(電子カルテの記載)▽医療事務(診断書等の文書作成、予約業務)▽院内の物品の搬送・補充、患者の検査室等への移送-の1日当たりの業務時間などを調べた。その結果、これらの業務に費やした時間は約240分(50歳代以下の常勤医の平均時間)で、このうち約47分(約20%)が看護師や事務職などに分担が可能なことが分かった。
8月2日に開かれた検討会の初会合で、塩崎恭久厚労相(当時)は「タスク・シフティングを通じて、いろいろな面で医師の働き方は十分変わり得る」と導入に積極的な姿勢を見せていたが、なぜ厚労省は早期実現に消極的な姿勢に転じたのか。
(残り1118字 / 全1896字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】