渡された名刺の住所は、網走市字三眺官有無番地。土地公簿で地番の付いていない無番地、つまり「番外地」にある北海道の網走刑務所。
刑務所などの矯正施設の医療は、「矯正医療」と呼ばれる。医療刑務所に限らず、一般の刑務所や拘置所、少年院など全国163施設は常勤の医師(矯正医官)を置くことになっているが、矯正医療の現場も全国の医療機関と同様に医師不足の例外ではない。矯正医官に兼業を認める「矯正医官の兼業の特例等に関する法律」(特例法)が成立し、2015年12月に施行された。そのかいあって、特例法の施行前は矯正医官の定員328人に対して250人程度だったが、施行をきっかけに280人(今年8月1日現在)にまで増えた。網走刑務所にも7年ぶりに、矯正医官が着任した。【君塚靖】
■がん最先端医療の現場から刑務所内診療所に
咋年4月に網走刑務所の医療課診療所に来た大松広伸さん(54)もその一人だ。ここに来る前は、国立がん研究センター東病院(千葉県柏市、425床)にいた。国がん東病院の呼吸器科に20年以上勤務。同科は検査部門と診療部門が明確に分かれていないことから、大松さんは肺がんの診断をはじめ、化学療法、ターミナルケアまでもカバーしていた。また、肺がんの早期発見のための、寝台が一定速度で移動してエックス線が螺旋状に照射されるヘリカルCT検診の研究に没頭するなど、がんの最先端医療にも携わってきた。
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