地域包括ケア病棟協会(仲井培雄会長)は先月、「アウトカム評価」の仕組みを地域包括ケア病棟に導入すべきだとする提言を、来年度以降の診療報酬改定に向けて厚生労働省に提出した。来年春の改定では、それを見据えたデータ集めに取り掛かるべきだという。アウトカム評価の導入が求められる理由を仲井会長に聞いた。【佐藤貴彦】
仲井会長は今月23日のCBnewsセミナー「18年度同時改定を乗り越え、生き残るために」で、地域包括ケア病棟の運用方法などをテーマに講演する予定だ。
■病床数増え続けても「まだ足りない」
2014年度診療報酬改定で創設された「地域包括ケア病棟入院料」と「地域包括ケア入院医療管理料」の届け出病床数はハイペースで増え続けている。
厚労省によると、10月時点の病床数は14年度が2万4645床で、15年度は3万6377床、昨年度は5万2492床だった。さらに地域包括ケア病棟協会の調べでは、今年7月時点までに6万床を突破。回復期リハビリテーション病棟(15年7月時点で約8万床)に迫る勢いだ。
ただ仲井会長は、今の病床数では将来の需要を賄い切れないとみている。高齢化のさらなる進展で、患者を治し支える「生活支援型医療」のニーズが増えるためだ。
団塊世代が75歳以上になる25年には、主に患者の在宅復帰を目指す「回復期機能」の病床数が、全国で計38万床弱必要になると見込まれる。
回復期リハ病棟は基本的に「回復期機能」を担うが、地域包括ケア病棟では「回復期機能」に加え、地域のニーズに合わせて「急性期機能」や「慢性期機能」を担う場合もある。そうした実情を踏まえて医療機関側が自院の機能を病棟単位で選んだ「病床機能報告」(昨年度分)では、「回復期機能」の病床数は計13万9062床で、25年の必要病床数とはなお25万床近い差があった。
回復期リハ病棟が果たす「回復期機能」では、主に脳血管疾患の手術後などの患者に、エビデンスに基づくリハを集中的に提供する。他方、これから増えるのは「生活支援型医療」のニーズだと見込まれる。
「そうした患者の在宅・生活復帰支援には、リハに加えてNST(栄養サポートチーム)や認知症ケア、多剤投薬対策なども必要。これらを包括的に実践できる地域包括ケア病棟の病床数はまだ足りない」と仲井会長は強調する。
■「包括払い」ならではの課題
それでは、地域包括ケア病棟をどうやって増やすのか-。仲井会長はトレンドとして、許可病床100床未満の病院でも地域包括ケア病棟を開設するケースが増えてきたと言う。
その一方で人員・設備面のハードルが高くてまだ開設できない病院や、開設はしたものの、在宅・生活復帰支援がうまく機能していない病棟もある。こうしたハードルを取り除くために厚労省などに働き掛けるのが、地域包括ケア病棟協会の役割だと仲井会長は話す。
アウトカム評価の導入を提言したのもその一環で、地域包括ケア病棟の報酬体系が「包括払い」であるが故の問題点があるという。患者を早期に退院させることへのインセンティブが働きにくいのだ。
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