医師対患者(DtoP)の遠隔診療に、来年4月の診療報酬改定に向けて強い追い風が吹いている。安倍晋三首相が先月、政府の未来投資会議の会合の席上、「評価する」と確約したためだ。この日の会合は、新たな医療システムの構築などがテーマで、在宅医療分野でのICT(情報通信技術)の活用で知られる医療法人社団鉄祐会の武藤真祐理事長が出席、遠隔診療を含めた新システムの必要性を指摘した。武藤理事長に、そのワケを聞いた。【佐藤貴彦】
■冷遇されてきた「DtoP」の遠隔診療
遠隔診療には2つのタイプがある。一つは医師と医師とをICTでつなぐ「DtoD」で、病理学の専門知識を持つ医師が遠隔で画像を受け取り、診断するテレパソロジー(遠隔病理診断)などを指す。画像データの送信・受診側の双方がそれぞれ一定の要件を満たせば、院内で診断する場合と同様に診療報酬の評価の対象となる。
もう一方は「DtoP」で、例えば医師がテレビ電話で患者に指示した場合、再診料(72点)を算定できる。ただ、例えば慢性疾患の管理を評価する特定疾患療養管理料(診療所の場合225点、月2回まで)などは算定が認められない。
「DtoP」は、診療報酬上で冷遇されてきたと言える。背景には診療は対面で行うものだという大原則がある。厚生労働省側も、医療サービスの質が対面診療より高くなることを示す「科学的なデータ」がない限り、診療報酬で評価しないと言い切ってきた。
■遠隔診療による経過観察、中医協でも議論に
そんな中で安倍首相が評価する方針を示したのは、対面診療と遠隔診療とを組み合わせ、かかりつけ医が継続的に経過観察する「新しい医療」だ。実のところ、中央社会保険医療協議会(中医協)でも、これに先立つ形で支払側委員が同様の仕組みを提案している。
しかし、この提案を受けた診療側委員からは慎重論が相次いだ。その理由は、対面診療が原則であることや、安全性を確保できない懸念があることなどだ。
■対面診療が抱える情報共有の難しさ
「そうした懸念は、臨床医の立場からはよく分かる」―。武藤理事長も、診療側委員に理解を示す。それでも遠隔診療を含めた新システムを提唱するのは、臨床現場に大きな課題があると考えるからだ。
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