昨年末、日本とロシアが合意した経済協力プランで、ウラジオストク市内でのリハビリセンターの開設が報じられるなど、社会医療法人北斗(北海道帯広市)がにわかに注目を集めている。同年5月、北斗は埼玉県の熊谷総合病院(熊谷市)を傘下に収め、関東への進出を果たした。その思惑は一体、どこにあるのか―。北斗の鎌田一理事長と、同病院の橋本郁郎理事長に話を聞いた。【敦賀陽平】
JA埼玉県厚生連は昨年1月、熊谷総合病院と久喜総合病院(同県久喜市)の事業譲渡を発表。熊谷総合病院は北斗が新設する医療法人に、久喜総合病院はカマチグループの一般社団法人巨樹の会(本部・佐賀県武雄市)にそれぞれ売却することを明らかにする。
その後、厚生連は同年6月に解散を決め、東京地裁に破産を申請。医師不足による経営悪化に加え、過去の設備投資の負担が重くのし掛かり、東京商工リサーチによると、負債総額は約64億6800万円に達した。
北斗は病院やクリニック、介護施設など、北海道の十勝管内で8施設を運営。2013年には、ウラジオストク市内に画像診断センターを開設しているが、国内ではそれまで、十勝以外の場所に進出したことはなかった。
昨年1月現在、十勝の高齢化率は全体(19市町村)で32.7%に上り、既に日本の30年の水準にある。医療経営を取り巻く環境が厳しさを増す中、鎌田理事長は、関東進出を決めた理由をこう話す。
「米国のIDSやIHN(※編注)、最近の地域医療連携推進法人に見られるように、これからは法人同士の合併や連携を基盤に、地域の医療提供体制をつくり変える必要がある。それが地域医療構想であり、地域包括ケアシステムだ。この2つは、しっかりとしたフレームワークがないと実現できない。北海道だけでは限界もある。全国の医療機関の動きを、僕らなりに問題意識を持って見た結果、今回の一件につながった」
※Integrated Delivery System(統合供給システム)、Integrated Healthcare Network(統合医療ネットワーク)の略。人口数百万人の広域医療圏で住民に必要な医療サービスを提供するため、幅広い機能が集まった統合事業体などを指す
(残り1415字 / 全2323字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】