【日本医業経営コンサルタント協会 東京都支部 中小病院研究会 外山和也】
前回、「中小病院が大きな病院との人材争奪戦に勝っていい人を確保することは難しい。そうは言ってもただ手をこまねいているだけでは人材不足は解消しない」として、巧みな人事戦略によってヒト集めに成功している中小病院があることを紹介した。この病院では、手始めに自院が必要とする人材ニーズの徹底分析からスタートして、以下のように2つの仮説を打ち立てたのである。
【仮説】 ・急性期の大病院のように、新しい技術をいち早く導入して最先端の医療を提供する「とことん型」の働き方をして、その見返りとしての給与の絶対額で他院との差別化を図るのではなく、「まあまあ型」の働き方で「そこそこ」の給与ではあるが、他の価値観と言うべき「ワーク・ライフ・バランス」を重視したいとする層を狙えばいいのではないか? ・多様な働き方にマッチした仕組みを構築できれば、ヒトを集めることができるのではないか? |
この病院では仮説に基づき、「ワーク・ライフ・バランス」「多様な働き方にマッチした仕組み」を以下のように構築した上で実践した。
1)病院全体で時間外勤務をなくす
「時間外勤務をしない」という最も基本的な取り組みを、病院をあげて推進することについて、就業規則にそのことを明記して、病院の「本気度」を職員に周知した。「時間外労働は原則しない。各部門部署は、それに応じた業務計画・人員計画を立案すること」とまで規則の中で言及している。
これには正直、驚きを禁じ得ない。筆者はこのご時世に、こんなにも職員を大切にするメッセージにあふれた就業規則があるのかと目を疑った。また、マンパワーが潤沢とは言えない中小病院ではなかなか手が回りづらいことであるが、「国の労働施策などに対応するために、少なくとも年に一度は就業規則を改定して、ブラッシュアップを図る」ことも行っている。
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