神奈川県西部にある鶴巻温泉病院(秦野市)は、206床の回復期リハ病棟をはじめ、240床の医療療養病棟※を持つ、591床の大規模施設だ。病院は都心から私鉄で1時間程度の距離にあり、周辺地域は今後も高齢者人口が増えていくと想定されている。そのため近隣でも回復期リハ病棟や地域包括ケア病棟の新設が増えており、鶴巻温泉病院では空床が出始めているのが現状だ。鈴木龍太院長は、2025年に向けての構想である在宅移行が急速に進み過ぎていると危惧しており、このまま県が増床すれば、病床過剰になると警告している。【大戸豊】
■政策のスピードが速過ぎて、病床が空く
神奈川県は、人口当たりの病床数が全国で最も少ない。25年に向けての県の地域医療構想では、都市部の高齢者の増加に伴い、現状(15年度の病院機能報告での病床数)は、必要病床数と比べて約1万床不足し、高度急性期の病床は3000床程度減らす一方で、回復期は1万6000床程度の増床が必要であると提案している。
地域医療構想の計算式では在院日数は現在と同じで、変化しないことを原則にしているが、鈴木院長はここ2、3年で急性期と回復期の平均在院日数は急速に短くなっているとし、「病床数は25年までに達成すべき目標なのに、在院日数を見ると在宅への移行という目標を先取りし過ぎている」と、急激な変化に危機感を覚えている。また、16年度診療報酬改定で回復期リハ病棟にアウトカム評価が導入され、在院日数の短縮化はさらに進むとみている。
例えば、在院日数が10%短くなり、それまで100日だったのが、90日で退院すれば、患者が10%増えなければ病床が埋まらなくなる。鈴木院長は、入院患者は増加しているが、現状では患者は在院日数が短くなった分だけの増加はないと言い、「政策のスピードが速過ぎて、病床が空いてしまい、病院経営の首を絞め始めている」と強調する。
図 鶴巻温泉病院の病棟配置
回復期リハ病棟206床、医療療養病棟240床、障害者施設等病棟60床、特殊疾患病棟60床、緩和ケア病棟25床 計591床
鈴木院長資料より
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