病院全体が丸ごと地域包括ケア病棟という、全国でも珍しい病院がある。社会医療法人財団慈泉会が運営する相澤東病院(長野県松本市、42床)だ。相澤孝夫理事長が目指すのが、患者の生活支援に根差した病院。「急性期病院の文化を変えたい」―。総工費8億円を投じ、赤字覚悟で理想の病院の開設に踏み切った相澤理事長はこう力を込める。その決断の裏に隠された思いに迫った。【敦賀陽平】
相澤東病院を開設したのは今年2月1日。その後、約4カ月かけて、届け出に必要な13対1病棟入院基本料の要件をクリア。先月1日付で「地域包括ケア病棟入院料2」を届け出た。最大60日まで算定できる同入院料に対して、13対1の平均在院日数の基準は24日以内。「実績を満たすのがとにかく大変だった」。相澤理事長はこう振り返る。
相澤理事長が同病院の構想を描いたのは3年前、まだ地域包括ケア病棟が制度化される前の話だった。相澤病院では当時、自宅に戻れない75歳以上の入院患者が6割に達し、その年代に限ると、平均在院日数は20日を超えていたという。
例えば、大腿骨近位部骨折の場合、集中的な治療が必要な期間は5日間程度。それ以後はリハビリなどに多くの時間が費やされる。「これが急性期の病院でやる仕事なのか」。入院患者のデータを見るたび、相澤理事長の中でその疑問は強まっていく。
精神科病院を閉鎖し、3つの診療所に再編成-トップの英断(1)
精神病床を持たずに精神科入院医療を実践-トップの英断(2)
(残り1339字 / 全2055字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】