消費増税を先送りする方針が示され、2018年度の診療報酬・介護報酬の同時改定への影響は避けられない見通しだ。病院経営を取り巻く環境は厳しさを増すばかりだが、それぞれの医療機関はこの荒波をどう乗り越えていくのか-。シリーズ「トップの英断」では、生き残りを懸け、大胆な経営判断をしたトップの胸の内に迫る。 |
■過去最高の入院件数でも、純利益が悪化
佐々木病院は1968年に開院した60床の精神科単科病院。開院当初は統合失調症やストレスケアの入院医療を行っていたが、80年代からは思春期や青年期の患者を対象とした医療にシフト。99年には世界で初めて「ひきこもりデイケア」を開設するなど、若年者の精神医療で先駆的な取り組みをすることで知られる。
それまでの同院の経営状況は順調で、2001年には新築移転をし、入院件数はずっと右肩上がりだったという。しかし、04年以降、入院患者が徐々に減少。短期滞在の患者が中心で平均在院日数が短くなったこともあり、病床の稼働率が低下し、収入が伸び悩むようになった。
後に、佐々木理事長が原因を分析したところ、その当時、外来患者は増加していたが、入院治療に至るケースが急激に減少していたという。しかし、空床を埋めるために他院との連携を強化し、紹介患者が増えていたことで、全体の入院件数の減少は微減にとどまっていたことから、正確な事態の把握に時間がかかってしまった。実際、病院全体の純利益が急激に悪化した10年の入院件数は350件を超え、過去最高の件数だった。「何かが違う」。佐々木理事長はそう感じていたという。
ほかにも、大規模病院に有利な診療報酬の改定による入院収益の減少、看護師不足による給与の高騰など、さまざまな悪条件が重なり、佐々木病院は経営的に行き詰まった。
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