地域包括ケアシステムの構築が進む中、公的な介護保険サービスだけではカバーし切れない“すき間”を支援する、いわゆる「保険外サービス」の需要が高まっている。利用者側にとって、よりきめ細かで多様な選択が可能になるだけでなく、介護事業者にとっては、介護報酬に頼らない収益源を確保したり、独自の強みを獲得したりする、新たな可能性を秘めた“新大陸”としても注目される。【烏美紀子】
京都の観光名所が表紙を飾る小ぶりの写真集。ページを開くと、高齢の女性が車いすで、京都の街をあちこち楽しそうに巡っている姿が現れる。
これは、株式会社アイビー(東京都葛飾区)が「生きがい支援事業」として展開している保険外サービスの利用例。「死ぬ前に一度、故郷の京都へお墓参りに行きたい」という70代女性から依頼を受けたもので、「1泊2日京都旅行への付き添いサービス、思い出をミニ写真集に仕立てる特典付き」というケースだ。
「『京都の何ていうお寺ですか?』『名前は忘れたけど、赤い門があって…』というところからだったんですよ」と、同社代表取締役の真鍋圭彰氏。菩提寺探しに卒塔婆供養の手配、せっかく行くならと本人の希望を聞いて練った嵐山の観光プラン、女性が入所する施設の職員との綿密な打ち合わせと、入念な準備でサービスを提供した。
「とても喜んでくれて、これで自信が付いたのか、その後も何度も利用してくださっています」(真鍋氏)。東京湾クルーズやショッピング、テレビで見たレストランで食事、今度は観光がメーンの2度目の京都旅行―。次の楽しみが普段のリハビリにも張り合いを与え、まさに女性の「生きがい」を支えている。
次回配信は5月2日を予定しています
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