日本総合健診医学会第44回大会がこのほど東京都内で開かれ、総合健診における高齢者健診をテーマにシンポジウムが行われた。フレイルやロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)を防ぐためには何が重要で、健診はどのような役割を担えるのかが話し合われた。【大戸豊】
東京慈恵会医科大整形外科の斎藤充准教授は、骨折と生活習慣病をテーマに講演した。近年、骨粗鬆症による脊椎椎体の圧迫骨折が「いつの間にか骨折」として注目されつつあるが、痛みがない場合も多く、気付かないうちに別の部位を骨折していることもある。
斎藤准教授は、骨は新陳代謝が高く、骨粗鬆症は治療効果が非常に表れやすいため、総合健診でも早期発見、早期治療につなげてほしいと言う。
ただ、骨折のリスクは、骨密度の低下だけでなく、生活習慣病も大きく影響しており、動脈硬化による疾患、糖尿病や脂質異常症などの患者は、骨密度が高くても、骨が弱くなることが、臨床的エビデンスとして蓄積されてきたという。斎藤准教授は、骨密度測定と同時に、コラーゲンから見た骨質の評価を行うことで、骨折リスクの評価精度を高めることが可能と言う。
2型糖尿病の72歳の女性(HbA1cは7.7%)は、骨密度若年成人平均値(YAM)が80%だったが(骨粗鬆症はYAMが70%未満)、椎体骨折が見られた。1年後には圧潰がさらに進み、第二腰椎にも新たな骨折があったものの、YAMは84%だった。
骨はミネラルとコラーゲンを中心に作られるが、通常コラーゲン分子には、適度な弾力を保ちながら石灰化を誘導し、骨をしなやかに強く結ぶ「善玉架橋」が行われる。しかし、加齢とともに骨コラーゲンにAGEs(終末糖化合物)が増加することで、コラーゲン分子には骨がもろくなる「悪玉架橋」が増加する。特に糖尿病や腎不全といった酸化や糖化の亢進する病態では、AGEsが過剰に形成され、骨強度が低下してしまう。
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