金融庁はこのほど、「海外におけるヘルスケアリートに関する調査研究報告書」(三井住友トラスト基礎研究所が受託)を公表し、日本国内でのヘルスケアリート(以下、リート)普及に向けた課題などを示した。報告書では、中小のオペレーターが運営する高齢者住宅などでも、競争力のある物件に投資する機会を拡大する必要があると指摘している。【大戸豊】
報告書では、高齢者住宅や介護施設への需要が高まる中、資金調達の手段としてリートへの期待は大きいものの、物件取得事例が少ない現在では、リートの寄与は限定的としている。
従来は、要介護状態が進んだ親を、家族が介護付き有料老人ホームを中心に入居させるケースが多かったが、報告書では今後この傾向が変化していくという。団塊世代が高齢化する中で、家族の介護負担も考慮し、自立あるいは要支援・軽度介護の段階で高齢者住宅などに住み替えるニーズが増えるとみている。
長期的には、地方圏の重度者向け高齢者住宅などが余剰になる一方、大都市圏での自立、軽度者向けの中、高価格帯の高齢者住宅が不足するなど、需給ギャップが生じる可能性が高いと予想する。
利用者側が入居を決める際、募集要項だけで評価することは容易ではなく、大手のオペレーター(高齢者住宅などの運営事業者)の運営施設が選ばれやすい傾向にある。ただ、中小でも地域に根差し、不動産コストを抑えつつ、質の高いサービスを提供している高齢者住宅も少なくない。
このためリートは、入居者に支持される競争力のある高齢者住宅を見極め、リートが運用していることが、その施設の安心や安全の一つの裏付けになるよう、サービス評価の業界標準を担うといった役割も期待される。
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