医師として立場変われど「医の心」貫く
あの時、私はこう考えた(4)
■患者会・患者団体が抱く「医療や制度への疑問・不満・不信」にアドバイス
林は現在、数多くの企業の医薬品や医療機器などに関する研究開発の専門アドバイザーとして、全国をまたに掛けている。行政で一定の役割を終え、今は企業側に立ち、医療現場や患者のニーズに基づいた新たな医薬品や医療機器を生み出すことに携わることで、患者・家族に希望の光を届けたいという。
また、厚労省に入る前まで続けていた、患者会・患者団体の活動に参加し、専門的見地に立った無償支援も再開した。自身のオフィスを患者会に開放し、患者会が抱えている医療や制度に対する疑問や不満、不信点について、モニターやホワイトボードを用いながら、一緒に問題解決に当たるスタイルだ。そこでは、時として患者会同士の新たな出会いの場ともなっており、人と人との化学反応が新たな力を生み出している。
患者会支援は、まだ緒に就いたばかり。豊中病院などで医師としてのキャリアを積み、その後厚労省の医系技官に転身。今度はそこを辞めて、医療現場と厚生行政を俯瞰しながら、患者会支援を模索している。立場を変えながらも「医の心」を持ち続ける林の挑戦は続いている。=敬称略=【君塚靖】
【患者会支援について林さんに聞いた】
患者会活動をしている方々は、自分自身ががんになったり、家族をがんで亡くしたり、その時々の経験がきっかけで同じように困っている人に尽くしたいという思いで行動を起こしている方々がほとんどです。ただ、中には不適切な医療で悲しい経験をしたことが原動力になっている方もいます。医療が招いた結果に、同じ医療者として責任を感じずにはいられないのです。
私の場合、医師として患者を診療することと、患者会を支援することは、同じ医師としての使命だと思っていて、責任を感じるからこそ支援をしたいと思っています。また、患者会の活動は、同じ境遇の方々のために、相談窓口や患者サロンなどをつくって直接的な支援活動を行っている団体もあれば、若くしてがんになった方々が集まって、以前では考えられなかった華やかさも併せ持った普及啓発イベントを開催する団体も出てきています。
団体の数の分だけ、その活動の幅は広く、バリエーションも多様化する時代に入ってきました。最近は、複数の患者会が連携し、組織化された全国団体も生まれており、かなり成熟してきています。とはいえ、まだまだ欧米の患者会・患者団体のアクティビティーには遠く及ばず、そこには私のような専門的支援も必要ですし、社会的・法的・制度的な支援も大事です。患者会・患者団体の成熟は、日本の医療をよりよい方向に導く重要なカギを握っていると信じています。
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