医師として立場変われど「医の心」貫く
あの時、私はこう考えた(4)
「患者とその家族に最も近い職種として医療現場での生活支援にも関わる看護領域については、外来や病棟などでのがん看護体制の更なる強化を図る」
基本計画では、日本看護協会の認定制度である認定看護師や専門看護師などの役割にも言及している。政府の全閣僚が署名し、閣議決定する基本計画に、国家資格でない資格職名が記載されるのは異例だ。これには厚労省内からも反発があったが、説得して回った。 この後に矢継ぎ早に打ち出された緩和ケアをめぐる施策の多くには、林のさまざまな思いが込められている。例えば、都道府県がん診療連携拠点病院の指定要件に「緩和ケアセンター」の設置が追加された。林の考えた緩和ケアセンターは、認定看護師や専門看護師が外来というフィールドで能力を発揮する拠点となり、結果的にそれが「がん難民」をなくすと期待している。
せっかく認定看護師や専門看護師の資格を取得しても、病棟に配置されるなど適正配置が行われず、能力が存分に発揮できないケースは多い。専門的な知識と技能を持った看護師が、患者にたどり着かなければ元も子もない。
また、医師は医局に自分のデスクを持って、さまざまな書類整理や学術活動を行っているが、認定看護師にはそれに代わるスペースもデスクもないのがほとんどだ。もし化学療法や放射線療法、緩和ケアなど、各認定看護師が一堂に会し、それぞれの認定看護師が保有するがん患者の診療情報を共有できれば、より手厚い看護方針が立てられる。
例えば診察を終えた外来患者ががん告知や再発告知を受けて途方に暮れた際も、緩和ケアセンターに立ち寄れば、医師の立場も患者の立場も熟知した認定看護師によるフォローアップが可能になり、患者の心理状態やさまざまな情報が主治医に報告されれば、主治医も次回診察の大きな助けになる。
そこで出てきたのが、認定看護師や専門看護師が一堂に会し、外来患者にアプローチする新たな外来拠点である緩和ケアセンターを創設するという発想だ。同センターの責任者となるゼネラル・マネジャーに、組織管理の経験のある看護師を充てようというのも、看護の拠点にしようという表れだ。緩和ケアセンターの設置によって、看護師が主治医をサポートしたり、患者に容易にアクセスできたりするようになることで、「がん難民」をなくし、より充実したがんの外来診療機能が医療現場に期待されている。
診療報酬でも緩和ケアを後押しした。14年度改定で、それまでの「がん患者カウンセリング料」に加え、医師または看護師ががん患者の心理的な不安を軽減するための面接をした場合の評価が新設された。「がん患者指導管理料」は1回200点で、それも継続的に6回まで算定できるようにした。
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