中央社会保険医療協議会(中医協)は22日、2016年度診療報酬改定に向け、さいたま市内で公聴会を開催した。埼玉県は、人口当たりの医師数の少なさや75歳以上の高齢者人口の増加率がいずれも全国トップ。登壇した同県の医療従事者らは、超高齢化を乗り切るため、入院や在宅での医療提供体制を整備する必要性を訴えた。【佐藤貴彦】
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厚生労働省の調査によると、県内の医療施設で働く人口10万人当たりの医師数(14年末時点)は、全国で最も少ない152.8人。就業中の看護師数(同)も、人口10万人当たり568.9 人で全国ワースト1だった。一方、同省の研究機関の推計では、同県の75歳以上人口は25年、10年時点と比べて99.7%多い117万7000人になる。この増加率は全国トップだ。
22日に開かれた公聴会では、地元の医療従事者や保険者ら10人が、16年度診療報酬改定への意見を発表した。
連合埼玉県連合会の佐藤道明事務局長は、急速に進む県内の高齢化に限られた医療資源で対応するには、医療機関の役割分担を進める必要があると強調。急性期患者を受け入れる医療機関の機能を明確にした上で、急性期の治療を終えた患者にリハビリテーションを行う医療機関や、在宅医療を提供する医療機関の充実を図るべきだとした。
県医師会の湯澤俊副会長も、高齢者のさらなる増加を見据え、通院患者や在宅患者を診る診療所の医師を確保することなどが喫緊の課題だと指摘。「在宅医療を担う診療所が安定して経営できるような(診療報酬の)点数設定をお願いしたい」と述べた。
また、県薬剤師会の斉藤祐次副会長は、薬局の薬剤師が医療機関の医師などと力を合わせて高齢者の暮らしを支えるため、患者の服薬情報を一元的に管理する取り組みなどを診療報酬で後押しするよう要望した。
一方、県看護協会が運営する川口訪問看護ステーション(川口市)の三塩操所長は、高齢者の増加に伴い、認知症と身体疾病を併せ持つ患者が増えることも予想されると指摘。そうした人が住み慣れた地域で在宅療養できるように、訪問看護の提供体制も整備すべきだと主張した。
この日、公聴会の会場には500人近くが詰め掛けた。中医協は、公聴会で発表された意見や22日までに集まったパブリックコメントなどを踏まえ、2月中旬までに16年度の改定案を答申する。
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