都市部で赤字を出す公的病院に、存在意義はない-。東京都大田区にある「地域医療機能推進機構(JCHO)東京蒲田医療センター」(230床)の内野直樹院長は、足元の課題を一つ一つ解決しながら、再建を進める。特に医療安全対策のルールの徹底を急いでいる。赤字の公的病院が少なくない中、どのように経営を安定させていくのかを聞いた。【大戸豊】
JCHO本部は、14年度上半期に2億円の赤字になるなど、経営不振が続いていた蒲田医療センターの再建を、14年11月から内野院長に託している。
■夕方、タイムカードの前にいたのは
赴任から間もないころ、JR蒲田駅からタクシーに乗るたびに、運転手に病院の評判を聞いた。「健診はいいけど、入院はほかがいいですよ」。9割以上がネガティブな反応だった。
夕方5時前、病院のタイムカードの前には職員数人がたむろしていたこともあった。定時が来るのを待つ医師たちだった。内野院長が「お疲れさま」と声を掛けると、いつの間にかそれもなくなった。しかし、就任時に48人いた医師は29人になった。
「駄目な病院は、他の職員には厳しいことを言うが、医師だけは特別扱いする。ここもそうだった。まず医師に対して厳しく接することが必要。自分はどこでもそうしてきた」
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