昨年の介護や老人福祉に関連する事業所の倒産件数は、介護保険法が施行された2000年以降で最多となったことが、東京商工リサーチの調査で分かった。特に通所介護事業所などの倒産件数は、一昨年から倍増した。東京商工リサーチでは、深刻さを増す介護職員の不足が事業経営を圧迫していることに加え、昨年4月の介護報酬改定が9年ぶりにマイナス改定となったことも影響したと分析している。【ただ正芳】
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東京商工リサーチでは、昨年1月から11月までにかけての有料老人ホームや通所介護事業所、訪問介護事業所などの倒産件数やその負債総額などについて、調査・分析した。 その結果、昨年1月から11月までの倒産件数は66件で、過去最多の倒産件数を記録した一昨年の同期(49件)と比べても34.6%増加した。さらに一昨年一年間(54件)も上回り、11月までの段階で過去最多の倒産件数を更新した。一方、負債総額は58億7200万円で、一昨年同期(66億3100万円)から11.4%減少した=グラフ=。倒産件数が増加し、負債総額が減った背景について、東京商工リサーチでは、負債10億円以上の大型倒産はなかった半面、負債5000万円未満の倒産が一昨年に比べて増加し、全体の65.1%を占めるなど、小規模事業所の倒産が増えたためとしている。 昨年1月から11月までに倒産した66事業所をサービス種別で見ると、最も多かったのは「訪問介護」と「通所・短期入所介護事業」だった。いずれも26件で、特に「通所・短期入所介護事業」は一昨年同期の13件から倍増していた。「訪問介護」も一昨年同期(22件)から18.1%増えた。そのほかは、サービス付き高齢者住宅やケアハウスなどを含む「その他の老人福祉・介護事業」が7件、「有料老人ホーム」が3件、「その他」が4件だった。 ■特に目立つ「小規模・新規事業者」の倒産 さらに従業員数別では、「5人未満」が42件で全体の63.6%を占めた。「5人未満」の事業所の倒産は一昨年同期から25件増加しており、従業員数からも零細事業所の倒産の増加が目立つ結果となっている。設立年数で最も多かったのが「設立から5年以内」(36件)で、全体の54.5%を占めた。 倒産の形態別では、「破産」が63件、「民事再生法の適用」が3件だった。 調査にあたった東京商工リサーチでは、「通所・短期入所介護事業」の倒産の増加が際立つ結果となったことについて、「人材不足の影響に加え、通所介護は昨年4月の介護報酬改定で基本報酬が大幅にダウンした。さらに小規模事業者では加算の要件をなかなか満たせないところが多いことも影響したのではないか」と指摘している。
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