2016年度の調剤報酬改定は、中央社会保険医療協議会(中医協)での議論が本格化する前から苦戦が予想されていたが、実際に厳しいものになりそうだ。医療環境情報研究所の大谷勇作代表は、「かかりつけ薬剤師」についての議論の方向性に疑問を呈するほか、地域差を考慮していない改定は、薬局のない地域をさらに生む危険性があると言う。【大戸豊】
12月4日の中医協総会では、「かかりつけ薬剤師」が俎上に載せられ、議論に注目が集まった。
厚生労働省が10月に示した「患者のための薬局ビジョン」では、「かかりつけ薬剤師」が持つべき機能として、「服薬情報の一元的・継続的把握」「24時間対応・在宅対応」「医療機関等との連携」の3つの柱が示されている。
「患者のための薬局ビジョン」より
大谷氏は、「患者のための薬局ビジョン」で示されている「かかりつけ薬剤師」は、本当に実効性のあるものなのか疑問と言う。既に、個人薬局などでは、「かかりつけ薬局」や「かかりつけ薬剤師」の役割を担ってきており、改めて何を目指しているのか疑問だと言う。また、大手調剤薬局チェーンなどであれば異動が必ずあり、同じ店舗に勤務し続けられない中、「かかりつけ薬剤師」の役割を果たすことが果たして可能なのかと言う。
ICTの活用を通じて、患者情報や受診するすべての医療機関の処方情報などを把握できるようにすることで、薬剤師が異動しても、後任の薬剤師に情報が引き継がれ、「かかりつけ薬剤師」として役割を果たすということかもしれない。しかし、情報システムの構築や整備などは、誰が実施し、誰が負担するのかが見えない。
「患者のための薬局ビジョン」では、行政側がどのように「かかりつけ薬局」「かかりつけ薬剤師」をサポートしていくのか、具体的にまったく触れられていないという。
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