「こんにちは」「お疲れさま」-。作業用のテーブルが幾つか並べられた部屋に一人、また一人と、人が集まって来る。そのたびに「もうお昼ご飯食べた?」「天気いいね」などと何気ない会話が交わされる。そして、時間になると一斉に作業を開始する。一見すると、それはごくありふれた仕事場の風景だ。しかし、そこは医療法人藤本クリニック(滋賀県守山市)が始めた若年認知症の人が働く「仕事の場」。制度からこぼれ落ちた若年認知症の人をサポートし、症状が進めば介護保険につなぐ場でもある。【坂本朝子】
「仕事の場」は2011年、同じタイミングで休職に入った3人の若年認知症患者のために誕生した。当時、患者らはまだ50-60代前半と若く、退職したからといってすぐに介護保険の利用を考えられる状況ではなかった。まだできることもたくさんあった。患者や家族と話し合った結果、何らかの形で仕事をし、対価を得、社会貢献をしていきたいという思いを実現する方法を模索することになった。
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