団塊の世代が後期高齢者になる2025年に向け、高齢者人口が増加の一途をたどる。それに伴い、救急搬送患者の年齢構成比も変わり、13年にはついに65歳以上が半数を上回った。しかし、今後、救急医療の需要が高まることが想定されるにもかかわらず、救急告示病院は年々減少を続ける。厚生労働省の「救急医療体制等のあり方に関する検討会」の委員を務めた加納総合病院の加納繁照院長は、「このままでは、“たらい回し”が社会問題化した07年のような事態になる」と強い危機感を募らせる。【坂本朝子】
総務省の消防白書によると、救急告示病院は14年4月現在3858施設で、この10年で362施設減少した。中でも民間病院の落ち込みが激しく、二次救急が減少している。
「答えは簡単。経営が成り立たないからです」と加納院長は言う。救急病院の体制維持には多額の人件費や設備費がかかる。しかし、手厚い加算が付く三次救急と違い、二次救急ではそのコストに見合う診療報酬上の手当てが付かず、公的病院のように繰入金などもないからだと指摘する。
しかし、日本の総人口の3分の2に当たる、人口密度が高い22の都道府県では、救急搬送患者の半数以上を民間病院が受け入れているという。東京や大阪など7割以上を民間病院が受け入れている地域もある。加納院長は「今は踏ん張っているだけで、ジリ貧になっているかもしれません」と懸念する。
看取り救急なくす「鍵」は?-急がれる「高齢者救急」の備え(下)
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