「がん患者が自分の死について考えた時、そのことについて語る場がありません」。薬剤師で、がん患者でもある宮本直治さん(北野病院薬剤部係長・がん患者グループゆずりは代表)は、そう指摘する。実は宮本さん、浄土真宗本願寺派の僧侶でもある。さまざまな立場から「死」を見つめ続けてきた宮本さんに、がん患者の「死」について聞いた。【坂本朝子】
それは、宮本さんが患者会などでがん患者に向けて発信し続けているメッセージだ。命あるもの、いつか必ず死を迎える。だからこそ、今をどう生きるかを考えてほしい。そんな思いが込められている。
そして、宮本さんは、こう主張する。
いつのころからか、社会は死を遠ざけ、死を直視しなくなった。それは医療者も例外ではなく、「自分が何をしてあげられるのか」というケアの対象者としての命しか見ておらず、本質的な死と向き合っていない。しかし、がん患者は、いや応なく死を考えるようになり、さまざまな不安や“もやもや”を抱えている。たとえそれを解消できなくても、言葉にして吐き出すことができる場所が必要だ。
宮本さんが、そうした考えに至るまでには、長く、まっすぐな道のりがあった。
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