高齢者を在宅で支えていくために欠かせないのが「食べること」への支援だ。栄養管理はもちろん、誤嚥性肺炎などの予防やQOL向上という点でも「食」は重要なポイントだが、在宅におけるサポートはまだ不十分で、システム整備と共に訪問栄養管理の実践が広がっていくことが求められている。このほど東京都内で開かれた日本栄養士会のシンポジウムでは、食を視点にすることで見えてくる在宅医療・介護の課題が報告された。【烏美紀子】
日本歯科大口腔リハビリテーション多摩クリニック(東京都小金井市)院長の菊谷武氏は、在宅高齢者らの食を地域で支えるための取り組みを紹介した。
同クリニックは口腔リハ専門の診療所として2012年に開設された。歯科医師や医師、言語聴覚士、管理栄養士のスタッフが、乳幼児から高齢者まで幅広い世代の患者をサポートしており、訪問診療にも力を入れている。クリニックにはキッチンを設け、地域住民向けに介護食教室を定期的に開いているという。食べることを支える上での問題点が、こうした教室で垣間見えると菊谷氏は指摘する。
「高齢者の食べる機能に合わせた食形態をそれぞれの家庭で提供できるかが重要なのに、その方法を教えようと教室を開いても女性しか参加がない。摂食障害が起こるのは男性も女性もイーブンだ」
ある女性患者のケースでは、本人の食べる機能には問題がなかったが、83歳の夫がまったく料理のできないタイプで、レトルトの介護食を教えても電子レンジの使い方を知らなかったという。「本人の能力が食べられるかどうかを決めるのではなく、夫が何を作れるか、家庭環境・介護環境によって左右されるという現実がある」と菊谷氏。「それが破たんしていると、いつでも低栄養になるし、肺炎になるし、食べ物をのどに詰まらせる」。
(残り1643字 / 全2401字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】