手術室数を変えずに件数が倍増、採血室の集約化によって患者の待ち時間を短縮できた―。大学附属病院が施設整備を行う際、こうした“成功例”を参考にしてもらおうと、文部科学省の検討会が施設整備の事例集の作成を進めている。検討会の委員らは、単位面積当たりのCO2削減といった環境面に配慮したり、東日本大震災などの教訓を踏まえて防災面を強化したりする試みを収集。今年度内にも事例集を完成させる方針だ。【新井哉】
「事例収集に当たっては、病院の規模だけでなく、地域の特殊事情についても切り口として加えてはどうか」。検討会の会合で委員の1人は、東日本大震災以降、都市部の病院と地方の病院とでは整備の基本方針のコンセプトが変わってきたことを指摘し、BCP(事業継続計画)の対応として備蓄などの必要確保日数や、機能維持に必要な状況が病院の立地によって異なると訴えた。
この委員は「震災時は余震があり、エレベーターが使えなくなることから、ヘリポートを屋上だけでなく地上としている例や、階段を用いた移動を考慮し、踊り場を広く計画している例もある」と説明。特に地方の病院では高齢者が多く、災害時は在宅医療の患者も病院に集まることから、「酸素の使用量が多くなる」とし、備蓄量も考慮する必要があるとした。
特に災害時には施設面のBCPが不可欠なことから、検討会では、東日本大震災の前から施設整備を進めていた東北大病院(仙台市青葉区)の取り組みを事例集に盛り込む方針だ。同病院については、商用電源停止と同時に非常用発電機などの運転開始で電気を供給したことや、高度救命救急センターの入り口をトリアージポストとすることで、500人以上の患者のトリアージを行ったことを「成果・効果」の項目に記載するという。
(残り1375字 / 全2127字)
この記事は有料会員限定です。
有料会員になると続きをお読みいただけます。
【関連記事】
【関連キーワード】