阪神大震災では、クラッシュシンドロームが多くの命を奪い、一方の東日本大震災では、慢性期患者への支援の重要性が高まった。災害ごとに医療ニーズが異なる中、自らも被災経験を持ち、2つの大震災で被災者の支援に尽力した、兵庫県医師会会長の川島龍一さんは「その人に一番合った薬を把握しているのがかかりつけ医です」と訴え、地元の医院の再開支援が、慢性期患者を救う鍵を握ると主張する。【聞き手・真田悠司】
院内はめちゃくちゃでした。屋外にマットを敷いて野戦病院のように診療しました。針や糸は消毒できず次第に使えなくなり、抗生物質は当初3日分処方していたが、すぐになくなるという感じで、その後は1日分、1回分と少しずつ量を減らしました。
-震災から20年を迎えて感じることをお教えください。
20年前の震災は、非常に厳しい試練ではあったが、貴重な経験でもありました。当時、神戸は「安全神話」があり、機能不全に陥るほどの大災害を予想しておらず、備えをしていませんでした。
地域医療体制が崩壊した状況で、最初のころ難病を抱えている方や高齢者、心身にハンデを持っている方など、いわゆる災害弱者がどうしても行政やわれわれ医療者の目からは忘れられていました。
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