阪神大震災による死者は6400人余りで、その半数近くを65歳以上の高齢者が占める。その数には、避難生活の疲労やストレスなどによる「災害関連死」で亡くなった約900人も含まれる。関西を直撃した巨大地震は、災害弱者である高齢者への支援体制不足を浮き彫りにした。あれから20年-。介護保険制度の創設、地域包括ケアの推進など、介護を取り巻く環境は大きく変わった。あの日から奮闘を続ける介護関係者に話を聞いた。【坂本朝子】
幸い、ほとんどの家具はベッドと平行に倒れ、唯一たんすが直撃したベッドも、その入居者がトイレに立っていたため、全員が無事だった。建物にも大きな被害はなかった。
地震発生時、喜楽苑の苑長を務めていた市川禮子さん(現・社会福祉法人きらくえん理事長)は、「あの日、一番困ったのは職員の出勤。ただでさえ日本の職員配置基準は貧しいのに、3分の1の職員が出勤できなかった」と振り返る。
そんな職員が手薄な状態でも、水と食料の確保に手を尽くし、近隣の独居世帯への配食サービスを震災当日から毎日欠かさず続行。連絡のつかない職員や入居者の家族、デイサービスの利用者ら約300人全員の安否確認も4日間で成し遂げた。
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