3回目は回想法を紹介する。
回想法は高齢者の思い出や人生について話を聞きながら、共感的に受け入れる心理療法として知られている。【大戸豊】
慶成会老年学研究所(東京都港区)では、認知症の本人と家族を対象にしたグループによる回想法を10年ほど前から行っている。
宮本典子所長(臨床心理士)は、認知症と診断されても、本人も家族も認知症であることをすぐには受け入れられないため、早い段階で心理的なサポートが必要と考え、回想法を取り入れたという。また、その人のライフヒストリーを聞いておけば、その後入院することになっても、職員が対応しやすくなると話す。
「その人のこれまでの人生を知らないのと、知っているのとでは、ケアの質も変わってくるのではないか」
認知症の人は、自分はどこにいるのか、なぜここにいるのか、誰と話しているのかといったことが分からなくなる場合があり、とても不安になるといわれる。
宮本氏は「記憶が失われていくのは、本当に不安なこと。自分のこれまでの記憶を確認することは、精神的な安定につながるし、誰かが受け止めれば、安心につながる」と話す。
そして、失われていくものだけでなく、これまで築き上げてきたことに目を向けることで、自尊心を保ち、自信喪失を防ぐことにもつながるという。
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