胃がんの原因とされるピロリ菌を取り除く「除菌」の保険適用が昨年、慢性胃炎にも拡大され、検査や除菌を受ける人が増えている。こうした中、中学生などを対象に早くから検査や除菌をする試みが北海道や岡山県など一部の地域で始まっている。では、いったい何歳ごろの実施が最適なのか。先駆的なピロリ菌研究で知られ、自治体と連携してさまざまな取り組みを展開する兵庫医科大ささやま医療センター(兵庫県篠山市)の福田能啓病院長と奥田真珠美准教授に話を聞いた。【坂本朝子】
ピロリ菌研究者として知られる小児科医の奥田准教授は、そう話す。
奥田准教授は2010年、日本ヘリコバクター学会の理事長でもある福田病院長に請われ、同センターに赴任。篠山市で小児に対するピロリ菌の感染率や感染経路などを調査する研究に着手し、胃がん対策としてピロリ菌検査や除菌をどのように実施すべきかを模索してきた。
2010年からは2年間にわたり、同大と愛知医科大、杏林大の3大学合同で、篠山市内の保育園や幼稚園、小学校の子どもら1000人以上を対象に、ピロリ菌感染の有無などを調査。その結果、全体の感染率は2%弱と低いが、陽性の子どもの親は感染している割合が高く、感染した親子で菌のタイプが一致したことから、感染経路は主に家族内(特に母親)で、割と早期に感染していると判明した。
では、ピロリ菌検査を受けるのは早ければ早い方がよいかというと、必ずしもそうではないという。小さな子どもでは、なかなか抗体ができず「偽陰性」になるケースや、後に再感染してしまうケースがあるからだ。福田病院長は「7、8歳で除菌して、13歳で再感染したケースの報告がある」と話し、あまりにも年齢が低すぎる場合の治療はよく考えて行うべきだとのことであった。
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