東京都江東区でがん研有明病院を運営する「がん研究会」(がん研、草刈隆郎理事長)では、公益法人化した2011年度以降、3年連続で正味財産を20億円以上ずつ増やしている。経営状態が良好と思われる中、18年度までに約7億円の収支改善を目指すSG18(ステップアップがん研2018)運動を今年1月にスタートさせた。この運動では、医師や看護師、事務職員など法人内の全職種が、普段の業務と並行して収支改善の方策を検討しているという。どうすればそうした取り組みに全職種を巻き込むことができるのか、SG18運動を担当する太田隆博常務理事に話を聞いた。【佐藤貴彦】
1934年に、日本唯一のがん治療専門病院を豊島区大塚に開設したがん研。都の病院誘致の公募で事業者に選ばれ、2005年に現在の場所へ新築移転し、病床数を502床から700床に拡大した。がん研が公開する11年度以降の事業報告によると、毎年度の正味財産増加額は、11年度が約21億円、12年度が約31億円、13年度が約23億円と黒字が続いている。
収益増のための投資にも積極的だ。今年8月には手術室を4室増やし、計20室にした。さらに、16年春に地下1階地上4階建ての新棟をオープンさせ、放射線治療施設と健診センターを拡充する計画も進めている。
順風満帆にも見えるがん研が、約7億円の収支改善を目指す運動に取り組むきっかけは、昨年秋に起こった。太田常務理事は、当時をこう振り返る。
「新棟の建設を決めるに当たり、今後10年間の収支予測をまとめました。そこで出てきた絵は、今後は業績が下向きになるというもの。強い危機感を抱きました」
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