国立長寿医療研究センターの初代総長を今年3月に退任し、名誉総長となった大島伸一氏は、センターでの10年の勤務を振り返ってそう断言する。
このような高齢者医療の考え方は、医師の間に広まっているとは言えない。「医師が自由に専門分野を選び、結果として高齢者医療の専門家がいないという構造的問題がある」。寿命の延長のためにまい進した戦後の医療体制を今変えなければ、今後も続く急速な高齢化に対応できないと、危機感を訴える。【聞き手・大島迪子】 2004年3月、国立高度専門医療研究センター(ナショナルセンター)として国立長寿医療研究センターが設置された。初代総長の打診を受け、最初は「お断りしてもよろしいでしょうか」と答えた。 03年の当時は、国立大学の独立行政法人化の真っただ中。名大病院長でしたから、翌年4月の独法化のことで頭がいっぱいでした。それまで、高齢者医療に直接関与するような仕事は全くやってきていませんでしたし、センターの初代総長の話題が出ても他人事。病院改革が大詰めだったこともあり、一度は断りましたが、最後には「とても断れない」という状況になって引き受けました。
このセンターの構想は、がんセンター、循環器病センターに続くナショナルセンターとして1980年代には固まっていたのです。全国で起きた誘致活動などで、スタートまでに20年以上かかっていることになります。
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