神戸市内のホテルで12日午後7時半から行われた会見には、多数の報道陣が押し寄せた。会見には、先端医療センター病院長の平田結喜緒氏、同病院眼科統括部長の栗本康夫氏、理研発生・再生科学総合研究センター(CDB)・網膜再生医療研究開発プロジェクトリーダーの高橋政代氏の3人が出席。
執刀した栗本氏は「普通の手術とは違うプレッシャーを感じた」と述べ、安堵の表情を浮かべた。会見の主なやり取りは次の通り。
■同級生の栗本氏に「感謝の気持ち」―高橋氏
―どのような心境で手術に臨んだか。
栗本氏 自信を持って臨んだが、もちろん不安もあった。
高橋氏 栗本先生とは同級生でもあるので、安心していた。難しい部分では、わたし自身も汗が出るような緊張した面持ちでいたが、最後は本当によかったし、大満足の結果を出してくれた栗本先生に感謝の気持ち。
―細胞が目的の場所に定着したことが確認されたのか。
栗本氏 「定着」という言葉の解釈にもよるが、少なくとも目的の場所に留置できた。ちょうど網膜の一番中心から真下をカバーしているので、非常に理想的な位置にシートはある。
―患者の容態は。
栗本氏 昨夜入院されて、環境も変わって不安もあったと思うが、今日の朝は「落ち着いています。よろしくお願いします」というお話をした。手術後、麻酔から覚醒して病室に戻られてからは、手術の性質上、うつむいた状態でいる必要があるので、「うつむくのがしんどい」とおっしゃっていたが、非常に元気な様子だった。
―今回の手術で難しかった点は。
栗本氏 新生血管がかなり大きかった。この患者さんは、抗VEGF抗体の注射を18回ぐらい受けているが、それでも視力が落ちていた。病巣も大きくなっていたし、薬の影響で新生血管が網膜に癒着しているのではないかという予測があった。非常に大きな新生血管を取ることで大出血する可能性もある。取り出すのに少し苦労した。想定の範囲内と言えば範囲内だが、難しいと言われれば難しいと思う。どの手術でもプレッシャーはあるが、このプロジェクトにはたくさんの方々の努力や技術が詰まっている。患者さん以外の部分でプレッシャーが掛かる手術だったので、無事に成功して大変ほっとしている。電車の移動中にも頭の中でシミュレーションした。
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