一見すると無関係に思える「アート」と「医療安全」。しかし、アートの活用で医療安全が向上する可能性がある。大阪市立大が今年5月から開始した、医療や福祉にアートを活用する人材養成事業の一環として開催した講座「いのちをつなぐアート」で、同大医学部附属病院・医療安全管理部副部長の山口悦子氏が、そんなユニークな考えを披露した。【坂本朝子】
医療や福祉にアートを活用する人材養成-大阪市立大、今月から開始
認知症者の笑顔を引き出した1枚の絵-アートで生まれる新たなコミュニケーション
山口氏はまず、医療や福祉の現場にアートが取り入れられてきた歴史について概説した。
歴史的には医療や福祉の現場にアートは古くから活用されていたが、文献的に残っているものは少なく、文献で見ると1970年代後半ごろからイギリスを中心に報告され始め、現在では「サイエンス」などの有名誌でも特集されるようになり、欧米で広がりを見せているという。しかし、日本では「メジャーな医学雑誌で病院のアートを特集したものはなく、20年、30年遅れている感がある」と山口氏は言う。
また、アートの活用方法は時代と共に変化し、70年代後半から80年代にかけては「古い病院をいかに快適な環境に変えるか」という視点でアートが取り入れられることが多かったが、80年代から90年代には「病院の中の過ごし方にいろんな介入ができるのではないか」と考えられるようになった。さらに、90年代から2000年代にかけては、国の財政状態が悪いこともあり、「地域に早く帰すためにアートを活用する」という考え方が欧米では中心になってきたという。
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